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奥田亜希子著(集英社)

1983年生まれの女性小説家青春時代の回想録が書かれています。
著者の奥田亜希子さんは2013年に「すばる文学賞」を受賞して小説家になった人です。

引っ越しの多い家庭だったこともあって、高校時代までは地味にしていたようです。
大学も家から通えるところに入ったので高校時代よりは活動範囲は広がりはしたけど、生活のトーンは飛躍しなかったみたいです。ただ、遠距離恋愛ではありますが恋人ができたことが奥田さんの青春を大きく変えることになりました。

大学卒業後に遠距離恋愛を解消するために恋人の住む千葉県の会社に就職しました。
そして、その会社に同期入社した6人の女子たちが、偶然にも波長がとても合う人達だったのです。そして、その同期グループが繰り広げる破天荒な行動がこの本の主な内容です。
共通する趣味は読書だけで、他のことはバラバラなグループだったようですが、何か行動する時は無謀なこともためらわない団結力があったようです。
奥田さんが退社して結婚してもグループの行動は続きました。それがこのグループの普通では無いところです。

その奇異な行動の履歴を大雑把に紹介します。(ネタバレになるので内容は書きません)

(1)官能映画鑑賞部を結成する。

(2)鎌倉へ行って1日中アイスクリームとソフトクリームを食べ続ける。

(3)青春18きっぷの旅をしまくって、下記のような所に行きました。
  ・金沢
  ・秋田県(混浴温泉)
  ・青森県、函館
  ・鳥取県
  ・京都府
  ・石川県、滋賀県 
  ・伊豆
  ・館山
  ・四国
  ・北海道
  ・長崎
  ・高野山

その他にも、いろいろなバカげたことをやっています。それは、自分達が生きていることを確かめたいという青春時代の衝動に駆られて行っているようにも見えます。

奥田さんがグループの旅について、次のような面白いことを書いています。
「私たちは私たちのことが好きだった。」
「たぶん、隣町でも外国でも、行き先はどこでもよかった。自分の想像を超えたものを楽しめたら、それは自由を獲得したことと同じだ。そして、自由な場所に出たと感じられたら、その旅はきっといい旅なのだ。」

その後奥田さんは子供を出産します。旅行は無くなりましたが、その後もグループの付き合いは続きます。
そして、子どもを産んだ直後に次のようなことを奥田さんは決めました。
「夫に子どもを任せて遊びに行くことに、一切の罪悪感を持たないということ。夫に配慮や感謝はしても、子どもに、ましてや世間のようなものに、申し訳なさは覚えない。母親である私も父親である夫も、子どもにとっては一親等。法律上の距離は同じだ。」
このように思ってしまう程にグループの行動が著者にとっては、生活の基盤になってしまっていることに僕も正直言って驚きました。

その後、子どもが7歳前後になった時には、グループでなくて一人で岩手県に一泊旅行に行っています。
そして、このようなことを書いています。
「娘が小学生になったころから、遊ぶ母の背中を見ていろ!の気持ちで私は予定を入れるようになった。結婚するもしないも子どもを産むも産まないも、当然娘が判断することで、彼女が自分のパートナーを献身的にサポートしたいと考えるなら、それに反対するのも変だと思っている。でも、親になったら遊べないとか、遊んではいけないという考えは、自分にも他人にも向けて欲しくない。娘には社会を窮屈にすることに加担してもらいたくなかった。」

僕は著者よりある程度年上なので、著者の夫はかなり寛大な人なんだろうなと正直思いました。
上に書いたようなことが実行できる環境が、著者の住んでいる地域や周りの親族に存在していることに少し驚きましたが、それでも正論の一つだと思いました。ただ、今までの日本社会ではなかなか難しかったことも事実なのに、実行してしまうバイタリティーには敬服しました。
僕の家内を含め、自分の周りや友人の家族を見てきた限りでは、家族(特に子ども)に縛られない結婚というのは、簡単ではないと思うからです。
でも、この考え方はこれから結婚する若い人達にとっては、とても参考になると思いました。
それは、これから急激に社会は変わっていくだろうことは僕にもたやすく想像できるからです。
おそらくAIの発達も伴って、働き方、働く場所、地域との関わり方は急変すると思いますし、変わらないと高齢化社会になる日本の未来が開かれていかないような気もします。

いずれにしても、「今の自分達にできそうなことは何でもやってやろう!」的なバカ騒ぎっぷりは読んでいて本当に面白いし、僕も青春時代には似たようなことをやってきたので共感しました。

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