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保坂和志著(草思社)

タイトルは「途方に暮れて」ですが、保坂さんは全然途方に暮れていません。
「あとがき」にこの本がどんな本かよくわかる説明が書かれていますので、その文章を書き出してみます。
『とにかく、今はおかしな時代なんだから生きにくいと感じない方がおかしい。生きにくいと感じている人の方が本当は人間として幸福なはずで、その人たちがへこんでしまわないように、私は自分に似たその人たちのために書いた』
というものです。

保坂さんの小説の登場人物は社会に対して頑張らない人がほとんどで、このエッセイもそのスタンスで書かれいますが、小説より具体的に頑張らないことの意味や理由について書かれています。
そして、青少年から高齢者までのどの年代の人が読んでも励まされると思います。

また、教養が人間を支えていて、教養の中核になるのは文学や哲学だという考えを基に次のように補足しています。
『知識・教養というのは最終的に、他人からほめられるなど望まないようにその人を変えてゆく。他人からほめられるとかけなされるとかそんなことはどうでもよくて、際限のない知識の世界にその人を引き摺り込むものなのだ』

保坂さんは、何かが見えてくるまでにはとても長い時間がかかるのだから「ゆっくりやっていこう」と提案しています。そういう大器晩成的な見通しも生きにくい時代をやっていく中で必要ではないかと言っているように僕には読めました。

繰り返しになりますが、どの世代の人が読んでも心が勇気づけられる本だと思います。

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