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手作りの画集
「手作りの画集」太田裕美

「オレンジの口紅」  

この歌の作詞は松本隆さんです。そして、後に竹内まりやさんが唄った名曲「象牙海岸」の主人公が彼と過ごした夏の思い出の中身が書かれているのではないかと個人的にずっと思ってきました。
恋人たちが海で作ったエピソードの叙情性がたまらなくいいです。特に好きなところを書き出します。
「冷や汗かいてたコカ・コーラ 二人で半分ずつ飲んだ あの夏の光」
「あの頃あなたが泳ぐたび サメよと指差し驚かした 青い波 青春がきらめいた」
「岩場でキスした想い出も 心に悲しく打ち寄せる あの夏の光」
「オレンジ色の口紅さえ 二十歳を過ぎれば似合わない あの夏の光」

1970年代の18才や19才の青春の夏景色の王道が並んでいます。オレンジ色の口紅は当時のティーンエイジャーの間で流行していたような気がします。

この歌はもう会えなくなった彼と作った去年の夏の思い出を、主人公の女の子が思い出している内容になっています。もう会えない哀しさと、去年の輝くような「青い波 青春がきらめいた」との対比がせつなくて思わず歌の主人公に同情してしまいます。
別れは悲しいけど、大人になってから、こんな素晴らしい夏の経験をしただけでも幸せなことだったと彼を懐かしく思い出したりするのではないかと思います。

いつの時代も若い人達には青春を謳歌してほしいものです。

「わかれの会話」

この歌は「木綿のハンカチーフ」のように男女よる会話が交互出てくる詞の構造になっていて、もちろん作詞は松本隆さんです。
大人の女性に変わっていく恋人に対して、男性がそれを受け入れるこたができずに別れを切り出すという内容です。二人の心の食い違いが悲しい歌になっています。
男性「あの頃の君はミニスカート 今よりも無邪気だったよ」
女性「ひどいわ 時が過ぎれば 人は皆変わるものだわ」
男性「お別れにくわえた煙草に君の手で火をつけてくれ」
女性「ひどいわ 愛の炎に火をともすマッチはないの あの日もこうして爪先立って 口づけしたのも遠い

   夢なのね」
最後の「あの日も爪先立って口づけした」という言葉がどうしようもなく、聴く人の心を揺さぶります。
自分の恋人がきれいになりながら成長していくことを、この男性はどうして喜べないのかと昔から不思議に思ってました。そういうことがわからないのが若さなのかもしれませんけど。 

「オレンジの口紅」「わかれの会話」も男性からしてみたら理想的な女性なのに、それに気付かない恋人の愚かさとすれ違う恋人同士気持ちを書いた歌詞です。ちょっとした小物に女性の気持ちを反映させる手法が松本隆さんの特徴だと思いますが、それがこの頃から素晴らしかったことがよくわかります。
2曲ともアルバム曲でシングルカットされていませんが、太田裕美さんのファンの間では昔から名曲と言われていたと思います。松本隆さんはアルバム曲でも、とてもいい詞をたくさんの書いていたことがわかります。