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酒井順子・関川夏央・原武史共著(講談社)

コロナウイルス感染症の拡大で今年の夏はどこにも出かけることができなくて残念でしたが、本で紹介されている旅を疑似体験して旅気分を味わいたいと思います。
地元の図書館にも鉄道旅の本がたくさんあることがわかりましたので、これから少しずつそれらの本を紹介していきたいと思います。

今回紹介するのは、趣味の鉄道に関する著書をたくさん書いている三人の道ずれ旅のレポートです。
行く場所や乗る鉄道は主に原武史さんが立案したようですが、初めて知ったことや珍しい鉄道景色が毎回出てきてとても面白かったです。

三人の鉄道に対する接し方も別々な個性があって、そのあたりも趣味としての鉄道の良さが表れていると思いました。
酒井さんは電車に乗ると眠くなってしまう人で、景色や駅にこだわりはあまり無く、鉄道に乗っているだけで気持ちいいという人です。
関川さんもこだわりは強くないですが、物淋しい車窓や分岐点を見る時に文学的抒情を感じてしまう人で、行った先々でポツリと呟いた一言に味わいがあります。
原さんは鉄道全般における知識も豊富で車窓にも詳しく、駅そば大好きな鉄道マニアです。

三人で6回の旅をしましたが、僕が一番面白かったのは「徹底検証 北陸駅そば5番勝負!」という旅です。米原駅、福井駅、金沢駅、富山駅、直江津駅の駅そばを一日中かけて食べつくすというものでした。
原さんの駅そば好きを他の二人にもわかってもらう目的でしたが、そばの味だけでなく店構えも採点することが原さんのこだわりでした。関川さんが店のおばさんのことも評論するところが笑いを誘いました。

驚いたのは名鉄(名古屋鉄道)の西枇杷島駅の東側に分岐の三角地点があることでした。本に描かれている地図を見て、こういう所があることを初めて知りました。そして、西枇杷島駅は名鉄名古屋駅から三つ目の駅にもかかわらずこのような複雑な分岐構造になっていることにビックリしました。

三人の旅は車内の他のお客さんの観察をさりげなくやっていて、後から「鉄ちゃんがいた」とか「謎の中年カップルがいた」とか好き勝手を言い合うのも楽しいです。
そういうノリで冬の五能線に乗ると「日本海に雪はやっぱり演歌だ」と盛り上がっていました。
その五能線で関川さんが「いま見ている荒波は、青年の手前勝手な抒情の名残りかね」と呟いた言葉は、熟年層の人でなければ言えない自己反省を含めた美しい言葉だと思いました。

鉄道好きの人達による言いたい放題的な旅の様子はかなり面白く読めて、旅気分を充分に味わうことができました。。

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