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原武史著(講談社現代新書)

「鉄道ひとつばなし」シリーズの3冊目の本です。

いきなり最初に「至福の鉄道旅」と銘打って、神戸から門司まで二日かけて山陽本線を旅します。
これについて酒井順子著の「女流阿房列車」の中で、原さんと酒井さんの対談で少し出てきたように思います。
原さんは山陽本線の魅力について、要約すると以下のようなことを書いています。
・須磨から長府まで、瀬戸内海が見え隠れする。多島海の風景はいくら見ても見飽きない。
・歴史と文化がある。さまざまな意味で味わいのある町が多く、自然と人工が見事に調和している。
・気楽に途中下車できる。どこの駅で降りても一時間あまり待てば次の電車が来る。
・駅舎や跨線橋、ホームの屋根が古く、風格がある。

こういう観点から旅のレポートを書いているので、とても面白いです。
当然、瀬戸内海の海岸線の車窓話が多いですが、姫路駅名物の「えきそば」や宮島口駅の駅弁「あなごめし」のこともしっかり書いてくれました。
また、「三石駅から岡山県に入ると三石駅の古さから、急に文化圏が変わって、駅も町並みも昭和にタイムスリップする」ということを書いていますが、これこそが鉄道旅の情緒ではないだろうかと思いました。
それから、「吉永駅はホームの屋根が高くて、柱も長く、山陽本線の凄みがひしひしと伝わってくる。」というところは、自分も味わいたいと思いました。
山陽本線の終盤に登場する戸田駅と富海駅間の車窓は白眉だと絶賛しています。僕はどんな感じだったか忘れてしまったのでYouTubeを検索して思い出しました。田畑、トンネル、海岸線(いかにも瀬戸内海的な海)を繰り返していく車窓ですが、富海駅に到着する少し前から黒瓦の家がいくつか見えるところもいい感じでした。

二つの鉄道線のレールが駅の前後で接近したり別れたりする所があります。原さんはそれを「二つの線が接近・別離する10の型」というタイトルで分類しました。
「同棲破局型」、「謎の失踪型」、「奇跡の再開型」、「早く別れたい型」などと名前を付けてひとつひとつ説明していますが、それを読むと確かにタイトル通りの分岐になっていて面白かったです。そして、全て線名と駅前が紹介されているので、そこに乗り合わせたら先頭車両に行って確認してみたいと思いました。
そして特に面白く思ったのは、JR飯田線豊橋ー小坂井間と名鉄名古屋本線豊橋ー伊奈間はJRと名鉄が一本のレールを共有していることです。このことは以前に紹介した「鉄道旅へ行ってきます」という本のなかでも語られています。それでも改めて思うに、違う鉄道会社なのに線路を共有するなんて、その柔軟性にビックリします。今までに何回も乗ったことのある路線なのに、全然気が付きませんでした。こういうのは鉄道マニアの人達にはイロハのイだろうなと思いました。
僕は早朝からぼんやりと車窓を見ながら、「線路は続くよどこまでも」と小声で唄うだけでうれしいタイプなのでこの様な話は驚くばかりです。

「電車が読書の場になっている」という話は実感しました。考えてみれば、文庫本や新書は小さくて電車内で読むのにうってつけです。新聞や雑誌を読む人もいますが、何となくかさばるので僕はほとんど文庫本です。
電車の揺れと「ガタン、ゴトン」という音は読書に集中させてくれます。夜になって車窓がみえなくなったら僕は読書タイムにしています。小説は途中でやめると落ち着かないので、僕はエッセイや新書を読むことが多いです。それでも、夜間に長時間乗りそうな時は小説も読んだりしますが、これが面白かったりすると至福の時間になります。出かける前に持っていく本を選ぶのも楽しいです。

この他、「消えた駅弁」を自身が食べた経験をもとに紹介する話も楽しかったです。
僕も駅弁や駅そばは、思った以上に旅の思い出になったりすることが多いと思います。

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