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[岡田喜秋]の旅するこころ (講談社文庫)
岡田喜秋(講談社文庫)

岡田さんは日本交通公社が出版していた旅行雑誌「旅」の編集に1947年から1971年まで携わっていた人で、その後は紀行作家として活躍された方です。
雑誌「旅」の編集者をしている時、旅行好きで有名な文筆家の阿川弘之さんにたくさん原稿を依頼しています。それらをまとめた本が「お早く御乗車ねがいます」というタイトルで中央公論社から出ていますが、この時の中央公論社の編集者があの宮脇俊三さんでした。この話は「お早く御乗車ねがいます」のあとがきに書かれています。たいへんな人達が揃ったものだと感心します。
この本では1980年当時の、日本人の旅についての考察が書かれています。特に鉄道について書かれているわけではないですが、乗り鉄旅の途中で夜間の移動になった時などに読んでみると面白いと思って紹介します。

前半は、欧米人と日本人は歴史的な差異から旅のスタイルが違うという話や、高原などにできた、人によってつくられた人工的な「第二の自然」をどう考えるかということが語られています。
これらは、普段あまり考えずに旅をしている僕にとって、観光化された国立公園などに行った時、一瞬立ち止まるきっかけになりそうです。

旅のプロの岡田さんが好む小京都が紹介されていました。
角館、横手、盛岡、高山、金沢、三次(みよし)、津山、津和野、萩、山口、伊予大洲、島原、人吉、
日田、豊後竹田
です。
これらの街は現在ではそれぞれ、「重要伝統的建造物群」、「景観重要建造物」、「歴史的街並み景観形成地区」、「歴史的建造物」などに指定されています。岡田さんは城そのものより城下町の趣きのほうが好きだったようなので、今の状況は喜んでいると思います。
僕は半分も行ってないですが、小京都に魅力を感じる一人です。

それから各地の旅行に適した季節を教えてくれています。
北海道は初夏、東北は初夏か秋、信州は夏、瀬戸内海は春,南九州は冬がいいそうです。
北海道は特に6月がよく、梅雨がないから。東北は秋の十和田湖や裏磐梯の湖がよく、信州は高原なので夏が涼しくて快適であり、四国や南九州は本州がまだ寒い頃にいち早くナタネの花が咲く早春が最も快適だと書いています。これは素直にうなずける話だと思いました。

岡田さんは船旅を推奨しています。理由は移動に時間がかかるから良いのだという考えです。ジェット機のような人間の生理に反したようなスピードの乗り物は、文化の進歩が生んだ悲劇だとまで言っています。
旅は目的地だけではなくて、途中に起きる自分の心の変化や、出会った人との心の交流などが旅情だと書いてます。そういう話だと、現代ではローカル線の旅はなかなかいい旅かもしれないと思いました。

長く旅雑誌の編集をしていた著者の岡田さんが、本のタイトル通り、「旅をするとはどういうことなのか」を書いた本だと思います。

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