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杉浦日向子とソ連 編著(新潮文庫)

杉浦日向子さん江戸風俗研究家として、テレビにも多く出演したりしていました。また、漫画を表現手段にした著作も人気がありました。
「ソ連」というのはソバ好き連の略称です。「連」というのは江戸時代の江戸の街にあった市民サークルの呼び名で、利害関係のない同好の士によって構成されたリベラルな集まりで、職業身分年齢性別のすべてをこえて成り立っていたと杉浦さんの説明が書かれています。釣り、囲碁将棋、歌舞音曲、素人芝居、盆栽、俳諧、陶芸、書画など多種多様な道楽を、個人で行うより数段立体的に楽しむための装置として機能し江戸泰平の華と咲き乱れたそうです。大人の趣味の同好会と言った感じだと思います。(職業身分年齢性別のすべてを超えた付き合いというのが、今さらながら江戸時代というのは士農工商の封建制度はあるようでないような世の中だったことがわかります。)

僕が最初に笑ってしまったのは「まえがき」の最初の文章です。短いのでそこを書き出したいと思います。
「グルメ本ではありません。おとなの憩いを提案する本です。ソバ好きの、ちょいとばかし生意気なこどもは、いますぐ、この本を閉じなさい。十年早い世界ってものがあるのですよ。
腹ぺこの青春諸君も、もう、この先を読まなくていいです。諸君の胃袋を歓喜させる食べ物は、ほかにゴマンとあるはずです。
デートや接待に、使える薀蓄(うんちく)はないかと、データ収集のつもりの上昇志向のあなた。この本は期待に添えません。さようなら。」

という読者を逆指名するような書きようです。笑えました。

この書き出しでもわかるように、ここに書かれている主な主題は、美味しいソバ屋はどこの店かを紹介したり、ソバ好き連の人達が言い合うものでもありません。 午後の二時過ぎくらいの時間に一人でふらっと行ってお酒を二合ぐらい飲んで、もりソバを一枚か二枚たぐって帰るのに居心地の良い店はどこかというのを最大のテーマにしたソバ屋の紹介本です。 (ソバ好き連の人達が東京近辺在住なので東京の店が多いが、東は山形から西は松江ぐらいまでの店が紹介されています。)

ソバ屋の紹介は一店につき2~3ページで最後に住所、電話番号、営業時間、定休日、主なメニューの値段が紹介されているだけでなく、しっかりした地図ものっていてとても親切です。
店の紹介の合間に杉浦さんのコラム10数本が差し込まれていて、それも面白いです。 例えばんやもの いうでは、丼はソバ屋の出前かぎるというとても庶民的な味覚書かれていて、「確かに。」とつぶやきながら、クタっと湿気に満ちた天丼(ごはんにも天ぷらにもツユのしみ込んだ天丼です)を思い浮かべて笑いましたあれは不思議にに美味しいです。
その他に、「駅のそば」「近所のソバ屋」についても書かれています。

座談会というタイトルソバ好きの人達による告白合戦楽しいす。
1回目ソバ屋のつまみで始まり
種そソバ湯進み最後に値段のことまで話し合われました。

2回目は立ち食いソバに始まり、ソバ屋の亭主の人柄ソバ屋での粋な過ごし方について話し合われ、これも面白かったです。

ソバ屋というのは、昼間から一人で酒が飲めるなんとも緩んだ空間を持つ貴重な場所であることを自覚すると、とても楽しい本当に憩える場所なのだと改めて気づかされました。
振り返れば、僕も若い頃から一人で行くソバ屋が好きでした。昼間から酒はのまないですが、注文してから待っている間に、店にあるスポーツ新聞週間誌を読むのも大好きな時間です。なぜか、時間がゆっくりと流れて気持ちがのんびりします。

これから、近所のソバ屋に行こうかなと思いました。お銚子を一本飲もうかという気気持ちです。

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