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著者は1963年生まれで、歌人兼小説家主婦です。その人が自分の家で作った料理を紹介するという本です。そして、自分がまだ子供だった頃の実家の母親が作っていた料理の話から、結婚して子供ができその子供のためにいろいろ工夫して作った料理の話も書かれています。

おせち料理の黒豆から始まって、冬になるとやるの話、冷蔵庫に残っている物を何でも混ぜて作る
適当ちらしずしなどの紹介が続いていきました。それは、文学者というより100%主婦の感覚で、それがかえってこの本の味わいになっています。

面白いのは著者が自分の思い付きで、いろいろと実験的な料理を作るところです。どうせ食べるのは自分と自分の家族だけだという開き直った無責任さがどこかにあって、それが楽しいのでいくつか紹介してみます。
・お雑煮に青のりをかける(これは実家の伝統な食べ方)
・ハンバーグを練る時にシナモンを入れる
・カレーに野菜ジュースをコップ一杯入れる
・スパゲッティに使うトマトソースに小さくきざんだタコを入れる
・白和えにアボカド、マグロ、明太子、きゅうりを入れて絡める
・クラッカーに、ウニ、数の子、明太子サラダ、おから、金山寺みそをのせたカナッペを正月に食す
・白みそ、砂糖、山椒の葉、ほうれん草、ダシ汁で味付けした竹の子を和える
などが特に面白かったです。

子供成長していくと自然と食べ物に対する趣向も変わっていくし、それに寄り添っていく母親としての著者の対応や振る舞いも時々書き出されています。母親の持つ温かみを読んでいると感じてしまうのが、この本の値打ちかもしれないと思いました。


一つの話の最後に自作の短歌が添えられていますが、短歌の味わいよりも歌人である著者の食材に対する観察力に感心しました。冒頭にも書きましたが、文章の書ける母親で主婦の味わい深いエッセイとして読むことができる本でした。


当たり前に毎日、毎日、家族のごはんを作り続ける事のたいへんさと、新しい楽しみを探していく冒険心が共生しているところが書き表されている楽しい一冊でした。
これから結婚する女性や若い主婦が読むと、料理だけでなく気持ちの持ち方の面でも参考になるかもしれないと思いました。

東直子「千年ごはん」(amazon)
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