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姫野カオルコ著(文藝春秋)

滋賀県の田園地帯にある県立高校に通っていた、今は還暦の主人公による当時の思い出話です。
その高校はそれなりに進学校でもあったので、校則のほとんどない自由な校風の男女共学校でした。そのため個性的な生徒を懐深く受け入れていて、「1970年代といういうのはそういう時代だったな」と読みながら懐かしく何度も共感しました。

著者の姫野カオルコさんの何とも言えないユーモアにあふれた書き方に、何度も大声で笑ってしまいました。あんまり面白いので近くにいた妻に「ここ読んでみて、笑えるから」と読ませて、二人で何回か笑い合いました。

それから、その当時の事件や流行った物やアイドルスターなどが時々出て来るので、読みながらだんだんと1970年代に気持ちが戻って行く感じになって、自分もこの高校の生徒になったような気分で読むことが出来て楽しかったです。

男友達の相沢君がギター教室に通っていて、その習っていた教室が一人の生徒のを使っていたことを話すのに「なんと、***さんので習ってたんですよ!」言った時、「なんと、を付けて明かすようなことか」とその場にいた人にすぐ言われた話はしみじみと笑えました。
あの頃は世の中全般に不思議な生き物やUFOの話がたくさん出回っていて、テレビのバラエティー番組でも司会者がこの「なんと」をよく使っていたことを思い出したからです。「なんと」1970年代が最も盛んに使われた時代だったかもしれません。

保健室の若くて化粧の濃い先生と、学校中で人気があるサッカー部のエースとの関係を疑っている先輩の女子達に、そのサッカー部のエースから冗談半分に「クララ」と可愛く呼ばれているという理由だけで、その彼に保健室に入り浸らないように忠告することを命令された話も面白かったです。
先輩女子達はサッカー部のエースが好きなので、用もないのに保健室に行く彼のことが我慢できないのだけど、自分達から彼にそのことを注意するのは自分達が彼に好意を持っていることがばれてしまって恥ずかしいので、下級生の主人公に彼への忠告を命じるところは当時の高校生らしさがあって笑えました。
そして、その先輩女子達がサッカー部のエースから「クララ」と呼ばれている主人公に、恥ずかし気もなく嫉妬心を見せてしまうのは、正直な若さがあって微笑ましいです。

1970年代が持っていた、何とも言えない社会の雰囲気が懐かしく思える人や、青春小説が好きな人にはお勧めの本だと思いました。

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