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青山美智子著(宝島社文庫)

とのかくこの本はいい人ばかり登場して、素晴らしい人と人のつながりが書かれています。そのため読むととても前向きな気持ちになることができるという、大変にポジティブな本です。

たとえば、金婚式のお祝いとして娘に「オーストラリア旅行」をプレゼントされた老女はその旅先で長年連れ添った夫のことを、「血縁関係ではゼロ親等なのに、世界中の誰よりも一番血が濃いんじゃないか」と話します。

また、30歳前後の英会話教室の講師をしている女性は、時々行くカフェの男性店員に恋をします。(実はその彼も彼女に好意をもっているが意思表示はしていない)
彼女は意を決し、そのカフェで彼あてのラブレターを書いて帰りに渡すことを決心します。そのラブレターに書かれた次の文章を僕はとてもいいと思いました。
「好きな場所で、好きな景色を、好きな人と見て、好きなことを話す。私は今まで、そんな大切な願いに対して、どこか臆していたような気がします。でも、思ったときに進まなければずっと止まったままで、それどころか、その願いは果たせないうち気持ちごと消えていってしまうかもしれない。
桜並木の下に流れる川を眺めながら、私はあなたのことを、何度も想いました。・・
        僕は出だしの「好きな場所で、好きな景色を、好きな人と見て、好きなことを話す」というところが特に素晴らしいと思いました。誰かを好きになった時に一番求めるのは、シンプルだけどやっぱりこれだなと青春時代を思い出しました。

12章からなる小説ですが、話は独立していても登場人物が微妙に重なり合っていく物語は青山美智子さんらしいです。
繰り返しになりますが、とても読みやすくて前向きな気持ちにさせてくれる楽しい小説でした。