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[東直子]の薬屋のタバサ(新潮文庫)
東直子著(新潮文庫)

宮沢賢治の小説を読んでいるような気分になる不思議な小説でした。
ファンタジーのような、ミステリーのような、そしてどこか不条理な話で、何とも言えない読後感に包まれました。。

話の舞台が日本の地方にある小さな町かなと思って読み進めていくと、現実の日本社会では有り得ないことがその町では行われていたりします。

主人公の女性の出自や過去ははっきりとは書かれていないことや、相手役のタバサという変わった名前の薬剤師兼医師の家にまつわる謎めいた歴史などが少しずつ明かされていきます。
ネタバレになるのでこれ以上は書きません

歌人でもある著者の眼の高さが普通の小説家と少し違うように感じました。それがこの独特の世界観をつくったのではないかと、読みながら思いました。

僕もそれなりに小説を読んできましたが、このような小説は初めてでした。
この本の解説を書いている藤谷治さんは、この小説は「平成文学史の重要な小説として残る」というようなことを書いています。

僕の印象は東直子さんは、新しい小説世界を発明したかもしれないということです。
登場人物の誰一人として俗に言う普通の人はいなく、みんな何か現実離れしたものを持っていて、それが話の中で説明されるタイミングがとても計算されていることにも驚きました。
読んでいると「この人、本当はこんな人だったんだ。」と一番驚いてしまう場面で暴露されます。繰り返しになりますが、そのタイミングが絶妙で話にどんどん引き込まれていきます。

新しい読書体験をしてみたい人にお勧めです。

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