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[小島政二郎]の食いしん坊 (河出文庫)
小島政二郎著(河出文庫)

この本は昭和29年に最初の出版がされ、昭和35年に再出版されたものを、河出文庫2011年に文庫として出した本です。
ですから書かれている内容は主に大正時代、昭和初期、戦後間もない頃の話が書かれています。話の内容によっては明治時代のことも書かれていたような気もします。いずれにしても、令和の時代から見たら随分と昔のことなのに、なぜかとても面白い読み物なのです。だから、河出文庫も2011年に文庫として出版したのだと思います。

著者の小島政二郎さんはお酒は苦手な甘党だったために、この本には伝統的な和菓子の名店・名菓がたくさん出てきます。それは僕などが今まで知る事のなかった、一流の趣味人の人達が知っているようなお菓子です。僕は読みながら、初めて知ったお菓子をスマフォで検索し、写真を見て味を想像したりしました。どのお菓子も驚くほどに素晴らしい雰囲気を持っていました。

それから、書かれている話の中に文壇にいる著者の友人達が多く登場して、宴席や旅行先などで交わされたいろいろな話題も紹介されています。この本が書かれた時代の小説やエッセイが好きな人は、もしかしたら気になる文筆家の普段の言葉や、生活の様子を垣間見ることができるかもしれません。

それでは、この本で紹介された和菓子をいくつか書き出してみたいと思います。

・大阪市「鶴屋八幡」の西王母(せいおうぼ)、秋の山、琥珀糖
・京都市「笹屋伊織」のどら焼き
・名古屋市「万松庵」の納屋橋まんじゅう
・京都市「麩嘉」(ふうか)の笹巻き
・名古屋市「亀末廣」の薄氷(うすらい) (閉店したため、「亀広良」という店が引き継ぐ)
・名古屋市「美濃忠」上がり羊羹

などです。他にもいくつか紹介されていました。

ここに書いたお菓子を検索すると、どのように作っているのか想像もできないほど、見慣れないお菓子もいくつかあって驚きました。

和菓子の他にすき焼き、蕎麦、うなぎ、長浜の鴨、松阪の牛、コーヒーなどについても書かれています。戦中や戦後すぐの食糧難の時代は大変だったはずなのに、いい友達が多かったので、普通の人達に比べたらいろいろ食べている印象を持ちました。

明治時代に生まれ育った文化人のおおらかさと頑固さが、おかしみをにじませた味わいのある文章を作っています。
それが、何とも楽しい読書体験をさせてくれる良書になっていると思いました。

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