image_pdfimage_print
(河出書房新社)

に食べる甘い食べ物などについて書かれたエッセイ集です。
それは料理とは呼ばれないものがほとんどです。

話に出てくるのは、かき氷、アイスクリーム、蜜豆、水羊羹、ところてん、アイスキャンデーなどです。夏の食べ物のために、さほど栄養価も高くないこれらにこだわりを持つ人が以外と多いことがわかりました。。

その最高のこだわりを書いているのは、イラストレーターの南伸坊さんの「正しい氷水」というタイトルの話です。
まず、氷水店にはクーラーがあってはいけないと言ってます。(このスタートでこの話の面白さが予見できます)クーラーの無い店は今や絶滅しそうで、あるのはクーラーを付けた間違った店ばかりだと嘆いています。そして、近くでがガシガシ鳴いて、店の前の細い道をダンプカーが通っていくようなシチュエーションが良いそうです。僕も蝉はわかりますが、ダンプカーについてはよくわかりません。

そして、同じ価値観を持つ奥さんを連れて、夏に長野県の善光寺に行った時の話が紹介されています。クーラーの付いていない氷水屋が善光寺の周辺でもなかなかなくて、ようやく見つけた山門脇の店は軒にヨシズがめぐらしてあり、全ての戸が開け放たれていて、クーラーもエアコンもありませんでした。そこで味わったのは「梅甘露」という梅酒のシロップと梅の実の氷水でした。それは、感動的に美味しかったと書いています。

昔は日本中にあった駄菓子屋がどんどん無くなっているので、南伸坊さんの理想とする氷水屋は絶滅危惧種化していることは間違いないと思います。
ちなみに僕はさっぱりしている氷あずきが好きです。

あずきが出たところで、次に紹介したいのは漫画家でエッセイストの東海林さだおさんの書いた「井村屋のあずきバーの食べ方」の話です。東海林さんも独特のこだわりがある人なので、タイトルの「あずきバーをアイス」を見た時に読む前から面白い話なのは予測できました。
東海林さんが言うには、あずきバーは絶対にかじってはいけないそうです。しゃぶってしゃぶってしゃぶり通すことが正しい食べ方という自論をもっています。そして、溶けていく段階ごとのしゃぶり方が説明されています。(このあたりが東海林さんらしいです)途中で起こる「噛みたい」という誘惑に打ち勝つと最後に良いことが待っているとも言っています。それが何かはここでは書きません。

東海林さんのエッセイは、大人の男のくだらなさを、遠まわしに突き付けてくるところがいつも面白いです。

その他の人達が書いたエッセイは、カルピスところてんといった、作り手側にはほとんど工夫の余地のないものも出てきますが(ところてんは四角の筒に入れて押し出すだけです)、それらを読むと日本人というのは、誰が作ってもあまり変わりが無いものにも自分なりの食べ方を見つけていく人種なのだと思いました。もしかしたら、茶道などもそういった日本人的な趣味や嗜好の究極にあるものなのかもしれないと気がつきました。

夏の甘味のエッセイ集ですが、読んでいると日本人の強いこだわりは外国人と明らかに違う事がわかると同時に、日本人は世界の中でもだいぶ変わり者の部類に入る人種ではないかと思ってしまう本でした。

お問い合わせフォーム