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三浦しをん著(双葉社)

大きな温泉町にある高校の男子グループが、大小の事件を通して友情を深めていく話ですが、主人公の複雑な家庭環境の謎解きも加わっていて、最後まで楽しく読めました。

僕が一番に心を惹かれたのは、男子グループ内での会話のほとんどが「言われた人の気持ちを気にしないで、思ったことを何でも言葉にしてしまう」ことです。振り返れば、こういうことが出来るのも学生時代までかもしれません。だから、お互いに垣根を作らない友達関係は読んでいて眩しかったです。素直に「いいなー。自分も昔もこうだった」と振り返りながら、何が自分達の友達関係を変えていったのだろかと一瞬思いをめぐらせてから、「自分達は良くも悪くも大人になって、友達とはいえいろいろ気をつかうようになったのだ」とすぐに気がつきました。

それから主人公が駅前の商店街にある土産物屋の息子で、グループの中に近所の干物屋や喫茶店の息子もいる関係から商店街の助け合いが頻繫に書かれています。
その中で終盤に書かれている「迷惑のかけあいが、だれかを生かし、幸せにすることだってありえる。少なくとも、だれにも迷惑をかけまいと一人で踏ん張るよりは、ずっと気が楽なのではないか」という言葉は個人主義に徹するのではなく、お互い様なのだから、もたれかかれる背中があるなら時には遠慮しないでその背中を頼るのもありだという、著者の三浦さんの人生観に触れた気がしました。

かつての日本の地域社会が持っていた、近所や町内会の人との良い距離での繋がりが、これからの日本社会の新しい活力になるのではないかと思いました。そこでは能力に関係なく誰もが善人でなくてはならないでしょうけど。

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